


「歯の防災」過去の経験が教えてくれる口腔ケアの重要性

防災グッズの中に「歯ブラシ」を入れていますか? 「非常時に歯磨きどころではない」という考えは、命に関わるリスクを見過ごしているかもしれません。近年の大規模災害の教訓から、「災害時の口腔ケア」は、単なるエチケットではなく、命を守るための極めて重要な防災対策であることが、具体的なデータによって明らかになっています。
この記事では、なぜ「歯の防災」が必要なのかを、公的な報告書などの根拠に基づいて解説します。
1. データが示す、災害時の口腔ケアと「災害関連死」の深刻な関係
災害時、命を脅かすのは建物の倒壊や津波だけではありません。避難生活での体調悪化などによる「災害関連死」が深刻な問題であり、その大きな原因の一つに「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」があります。
熊本地震における災害関連死のデータ
平成28年(2016年)に発生した熊本地震の後、熊本市が発表した災害関連死に関する検証結果は、口腔ケアの重要性を明確に示しています。
出典:熊本市『平成28年熊本地震における災害関連死の死因等について(熊本市検証結果・H30.3.31時点)』
- 災害関連死と認定された218人のうち、死因が特定された182人中、「肺炎・気管支炎」が42人(23.1%)を占め、心疾患や脳血管疾患を上回り、最も多い死因でした。
この背景には、断水やストレスで口腔ケアが不十分になり、口の中で増殖した細菌が体力や免疫力の低下した高齢者などの気管に入ってしまう「誤嚥」があります。日本歯科医師会も、この誤嚥性肺炎のリスクを減らすため、災害時の口腔ケアの重要性を強く訴えています。
2. 水がなくても命を守る「実践的口腔ケア」
水が貴重な避難生活でも、口腔環境を清潔に保つ方法は存在します。以下に示す方法は、日本歯科医師会などが被災地での支援活動の経験に基づき推奨しているものです。
- 液体ハミガキ/デンタルリンス
- 多くの製品に含まれる殺菌成分(例:塩化セチルピリジニウム(CPC))が、歯垢(プラーク)中の細菌の増殖を抑制する効果を持つため、水でのうがいが困難な状況で感染リスクを低減させるのに有効です。
- 多くの製品に含まれる殺菌成分(例:塩化セチルピリジニウム(CPC))が、歯垢(プラーク)中の細菌の増殖を抑制する効果を持つため、水でのうがいが困難な状況で感染リスクを低減させるのに有効です。
- 歯みがきシート/濡らしたガーゼ
- 虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎の原因となるのは、細菌の集合体である「プラーク」です。これを物理的にこすり落として除去することが口腔ケアの基本であり、歯ブラシが使えない状況ではシートで拭き取ることが次善策として極めて重要になります。
- 虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎の原因となるのは、細菌の集合体である「プラーク」です。これを物理的にこすり落として除去することが口腔ケアの基本であり、歯ブラシが使えない状況ではシートで拭き取ることが次善策として極めて重要になります。
- 唾液腺マッサージ
- 唾液には、抗菌物質(リゾチーム、ペルオキシダーゼ等)を含み、口腔内を洗い流す「自浄作用」があります。ストレスや脱水で口が乾きやすい災害時において、耳の下や顎の下にある唾液腺をマッサージして唾液の分泌を促すことは、口腔乾燥を防ぎ、感染リスクを低減させる上で合理的です。
3. 根拠に基づく「歯の防災グッズ」リスト
被災経験のある歯科医療関係者の知見に基づき、日本歯科医師会などが推奨する防災グッズリストです。
推奨アイテム | 備えるべき理由 |
歯ブラシ | プラークを物理的に除去する最も効果的なツール。 |
液体ハミガキ/デンタルリンス | 水不足という災害時の環境に最も適したケア用品の一つ。 |
歯みがきシート | 水や洗面所が全く使えない状況を想定した備え。 |
デンタルフロス/歯間ブラシ | 歯と歯の間のプラーク除去率は歯ブラシだけでは約60%。災害時でも普段と同等の清掃レベルを維持するために必要。 |
入れ歯ケース・洗浄剤 | 入れ歯は細菌の温床となり、誤嚥性肺炎や口腔カンジダ症のリスクを高めるため、清潔な保管と洗浄は必須。 |
4. 最強の防災策は、平時からの「歯科受診」である根拠
災害時に慌てないための究極の備えは、日頃から口腔内のリスクをゼロに近づけておくことです。
災害時の歯科医療機能の停止
出典:日本歯科医学会連合『東日本大震災 歯科医療の対応と課題に関する報告書』など
- 東日本大震災では、多くの歯科診療所が建物や設備の損壊、断水、停電により、長期間にわたって診療機能を停止せざるを得ませんでした。
これは、いざという時に「歯が痛んでも、詰め物が取れても、すぐに歯医者にはかかれない」という現実を示しています。治療途中の歯や、問題があるとわかっている歯を放置したまま被災すれば、医療アクセスが厳しい状況で痛みや不安に苦しむことになりかねません。
したがって、平時のうちに治療を完了させ、定期検診によってお口を健康な状態に保っておくことこそが、最も確実な「歯の防災」と言えるかもしれません。
この記事をきっかけに、ご自身の防災グッズと、お口の中のチェックをしてみてはいかがでしょうか。
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